大同生命保険株式会社

全体的に満遍なく様々な試みを実施して、企業として着実に働き方改革に取り組んでおり、取組内容、ワーク・ライフ・バランスの実現とも極めて優れている。特に労務管理面では、所定の時間にパソコンを自動シャットダウンする仕組みの導入やビル消灯を実施するなど、過重労働抑制に向けた取組を実施し、健康で豊かな生活のための時間の確保を図っている。
■制度の整備状況
 在宅勤務制度の導入に当たっては、2013年に本社17部門(27部門中)を対象に、約2カ月間で延べ68人を対象にトライアルを実施。実施後のアンケートでは、ほとんどの参加者から「生産性の向上」や「ワーク・ライフ・バランスの実現」に効果があるとの回答があり、業務遂行や組織運営面でも特段の問題は発生しなかったため、就業規則およびシステム面等を整備の上、2014年4月に同制
度を導入した。導入に当たっては就業規則内に「在宅勤務規程」を整備し、利用対象者は本社所属の事務担当者(管理職含む)として、対象となる業務は当初「個人情報を含まない定型・企画業務」に限定した。
テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイル勤務 サテライトオフィス勤務
テレワークの利用者数(過去1年間) 1,681人
在宅勤務の対象を「個人情報を含む全業務」に拡大し、職場での業務と同レベルの業務遂行を可能にした。ただし、センシティブ情報を扱う、保険契約の引き受けや保険金の支払いといった査定業務は対象外とした。また『在宅勤務制度マニュアル』を整備し、従業員に在宅勤務に係る制度・利用に当たっての個別の留意点等を周知している。さらなる制度活用促進のため、2019年度より在宅勤務の利用回数制限を撤廃(それまでは週3回を限度)し、勤務場所も自宅以外を許可している。2018年度は制度対象者の15%以上が利用しているが、繰り返し利用するリピーターが多いのが特徴であり、今後は新規利用者層の拡大を課題としているため、「テレワーク・デイズ」などの機会を活用した、在宅勤務のキャン
ペーンにも取り組んでいる。
 在宅勤務制度導入のポイントとしては、①はじめから完璧を求めず、できることから始める、②社内資源を有効活用し、お金をできるだけかけない、③利便性と情報漏えいリスクは基本的にトレードオフの関係であるが、しっかりとリスクを検討した上で、情報漏えい対策を万全にすることだと考えている。
 さらに大阪本社には、在宅勤務の対象外となる保険契約の引き受けや支払いの査定を担当する部門が集中しているが、当該業務担当者の柔軟な働き方を促進するため、2018年10月には神戸にサテライト・オフィスを開設した。そこでの勤務ルールについては、『サテライト・オフィス利用マニュアル』を整備し、席の予約方法、利用ルール、利用に当たっての留意点等を従業員に周知している。
■経営上の位置付け
 経営ビジョンにおいて、ステークホルダーの満足度を増大させる上で、「すべての従業員がやりがいをもって働ける企業を目指す」ことを規定している。2019年からスタートした中期経営計画における人事戦略ならびに「人材力向上推進計画」において、前期から引き続き「働き方改革」を推進し、人材育成の強化、ダイバーシティの推進、人事制度の見直しと合わせて、「従業員が挑戦・成長を実感できる会社、長く活躍できる会社」の実現を目標としている。また、これまでは主に生産性向上を目的としていた『DAIDO-style』を「働き方改革」の指針として刷新した。その目的については、2019年に社長からのメッセージとして「すべての従業員の活躍を支援し、従業員とその家族の豊かな生活を実現」することと周知して、多様で柔軟な働き方の推進と生産性向上の両立を目指している。
■周知・啓発方法
 社内報や社内通知、マニュアル等を通じて、生産効率の向上、ワーク・ライフ・バランスの推進を目的として、在宅勤務やサテライト・オフィス勤務、タブレット端末の利用によるモバイル勤務の意義・メリット等を社員に案内している。加えて毎月の「ライン部長会」では、年1回ないしは2回のペースで各部門の所属長に意義・メリット等を定期的に案内し、所属長を通じて所属員への周知を実施している。また、サテライト・オフィス周辺に居住する従業員に対し、利用勧奨メールを半年に1回程度送信している。
■人事・労務管理の整備
 在宅勤務者には「事業場外みなし労働時間制」を適用しており、勤務中の中抜けも本人判断により認めている。ただし、過重労働を防止するため19時にはパソコンが自動シャットダウンする仕組みを導入した。また、在宅勤務を利用する場合、前日までに上司の承認を受け、在宅勤務の始業時および終業時には、上司に業務の開始および終了を電話かメールで連絡するルールを定めている。
 テレワーク勤務者には、通常勤務者同様の人事評価制度が適用され、通常勤務者と比べて評価上不利益とならない旨、マニュアルに明記している。

■情報通信環境の整備
【在宅勤務】
 部門サーバへのアクセスが可能なノートパソコンを貸与することにより、自宅でも会社と同等の業務が可能となっている。利用者は専用パソコン(シン・クライアント)からインターネットを介し、暗号化通信でサービス提供業者の仮想サーバに接続するが、仮想サーバや利用者のパソコンにはデータが残らず、印刷もできない設定としている。なお、2019年7月に在宅勤務用パソコンを新機種に交換することでWeb会議の利用を可能とし、かつ画面の見やすさ等利便性も向上させた。
【サテライトオフィス勤務】
 神戸のサテライト・オフィスには、契約管理部門で使用しているデュアルディスプレイ(複
数画面)表示や各種専用ソフトも扱える、保険契約や支払い査定業務が可能な専用端末を設置し、本社と同じシステム環境にしている。2019年6月末時点でのべ約100名が利用している。利用者からは「負担になっている満員電車での通勤が楽になっただけでなく、快適な環境で効率良く業務ができた」
と極めて良好な評価を得ている。東京本社のサテライト・オフィスについては、開設を検討中である。

【モバイル勤務】
 2013年度から、タブレット端末「エース・ウィズ」を支社全営業担当者に支給し、モバイル勤務が可能な環境としている。2019年9月に端末を新機種に交換し、利用時における接続環境の安定等、さらに利便性を向上させた。
 タブレット端末では、お客さまによる書類の記入や押印などを大幅に削減し、手続きの際のお客さま負担を軽減、さらに移動時間等の有効活用や必要に応じた直帰等の活用により早帰りを実現した。
 2019年4月に、営業担当者全員に貸与している携帯電話をスマートフォンに更改し、社内パソコンと同様のWeb閲覧機能や、ビジネス向けチャット・ツールの利用を開始した。営業活動の効率化および上司と部下のコミュニケーションのさらなる活性化を図っている。
またセキュリティの強化を図るため、スマートフォンに指紋認証機能を導入している。 

■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
 2018年度累計で214名(延べ480名)が在宅勤務を実施し、前年度より利用者は増加し
た。一方で、パソコンが自動シャットダウンする仕組みや、ビルの消灯、在宅勤務、サテライト・
オフィス勤務の勤務時間を原則9時から17時までとした効果もあって、全社平均でのパソコ
ンのログオフ時刻は、前年度より5分早くなっている(一昨年からは、年間15分早まった)。
 さらに、週3日までとしていた在宅勤務の制限を2019年4月より撤廃、加えて後述する
RPA(Robotic Process Automation)の活用による業務自動化、ペーパーレスや
Web会議などを通じて、労働時間の縮減を図っている。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
 身体に障がいを持つ職員や、再雇用者に対してもテレワークを推進し、通勤の負担を軽
減している。
【育児・介護と仕事の両立】
 育児・介護休業を取得している職員全員にノートパソコンを貸与して、休職中でも任意で全社通知等の確認程度はできるようにしており、長期の職場離脱による不安を軽減させている。
 2018年度内に出産し、育児休業を取得した女性職員は58名、介護休業取得者は5名で、妊娠・育児・介護を理由とした在宅勤務者は前年度より約40名増加した(延べ人数186名)。
 男性の育児休業取得率は在宅勤務制度を導入した2014年度から2018年度まで100%となっており、2015年にはイクメン企業アワードのグランプリを受賞している。また「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証である、「プラチナくるみん」の認定も取得している。

■社員の満足度
 2017年度に実施した従業員意識調査において、執務環境に関する項目で、社内のインフラが充実しているかの設問に対し、前回(2015年度)に比べて充実しているとする割合が上昇した。今年度実施予定の従業員意識調査においても前回同様に効果の測定を予定している。
■スタッフ層の働き方改革に向けた取組
 スタッフ層の働き方改革に向けた取組として2017年からRPA導入のためのプロジェクト設置し、品質管理部が全体統括する形で推進。外部専門家によるオンサイトサポートや、シナリオ勉強会・相談会の実施、社内への情報提供を継続的に実施してきた。その結果、2019年3月末時点のRPAによる効果は約500業務、年3万時間(要員にして約18名)の削減に至った。
 RPAの活用による業務自動化などの全社的な取組を通じて、2018年度は一人当たりの月平均残業時間が在宅勤務を本格導入した2014年度と比べて減少している。

■その他
・居室内照明を消灯することで、長時間労働の抑制を実施している。
・月2回、遅くとも18時半までに退社する「早帰りデー」を実施している。
■生産性向上の工夫による業績の拡大
 在宅勤務制度などの「働き方改革」を推進してきた結果、2018年度は一人当たりの月平
均残業時間を、労働時間縮減の取組を本格的に開始した2008年度に比べて半減させるこ
とができた。一方、業績面では新契約高、保有契約高が順調に推移しており、2018年度末
保有契約高が過去最高の48兆円を達成するなど、ワーク・ライフ・バランスを充実させながら
も生産性を向上させることができた。

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