テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務
サテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去 1 年間) 378 人
■制度の整備状況
2016 年 4 月に在宅勤務制度を導入している。
対象者を育児や介護などを抱える社員のみに限定せず、入社 4 年目未満の社員と製造ライン
で働く社員以外は利用ができるという制度にしている。これは、他社の導入事例や制度導入
のトライアル結果を基に、対象者を絞りすぎると利用がしづらい制度になるという点を考慮し、
できる限り対象者は限定しな方が良いと判断したためである。
他の制度(育児時間、時間単位休暇、半日休暇)と組み合わせて利用することができ、より
柔軟に働けるようになっている。
■経営上の位置付け
社内広報誌のなかで、働き方改革としての在宅勤務、時間単位休暇導入の目的、ワーク・ラ
イフ・バランスの最適化についての社長メッセージを発信している。
また、2015 年に中期経営計画「Transformation 2017」を発表し、新しい価値の創造に向け
ての「人財戦略(図表 1)」を策定。「人事制度とワークスタイルの変革」の中で、
テレワークの活用による時間・場所に依存しない多様なワークスタイル構築を掲げ、働き方改革に取り組んでいる。
基本的な事項社内でのテレワーク推進月間の創設や、イントラサイトの整備など、積極的なテレワーク導入の普及活動を展開し、活用の拡大につながっている。
ソリューション型人財への変革
●意識・スキル両面での教育と人財育成
●プロフェッショナル人財採用と社内人財の変革支援
人事制度とワークスタイルの変革
●マネジメント層リーダーシップ改革とグローバル人財の発掘・育成の強化
●時間・場所に依存しない多様なワークスタイル構築
●人事制度改革(グローバルおよびYHQ人事制度)
ダイバーシティ推進
●多様化推進による変化するビジネス環境への適応
●女性活躍支援の推進
- 女性マネージャーの倍増*
●Global 各社間の人財交流の拡大
- 外国人社員数倍増*
新しい価値の創造
■周知・啓発方法
働き方に関する Web ページ*を作成し、在宅勤務を含めた働き方に関する情報を周知した。
また、労使委員会を設置し、労使で働く環境改善に向けてテレワークを含めた議論を進めて
いる。
* Web ページの名前は HataLabo(ハタラボ)といい、
働き方改革を進めるキャラクターとして、ハタラボ所長を設定。
在宅勤務制度導入後の制度利用者は毎月 30 人前後で推移し、必ずしも制度を有効に活用さ
れているとは言えない状況であったが、このような状況を変えていくためのプロモーションの
一つとして、社内イントラに働き方に関する制度や事例をまとめた情報サイト「HataLabo(働
き方研究所)」を開設した。
同サイトでは、働き方に関する様々な制度の紹介に加え、実際に制度を有効活用している社
員の働き方の紹介や、制度の利用実績なども見られるようにしている。また、社員に興味を持っ
てもらうサイトにするために、これまでの社内イントラにはないようなデザインを考え、遊び
心も交えたサイトとなっている。
■人事・労務管理の整備
労務管理用のソフトウエアを併用し、始業・終業の管理をしている。自己申告による労働時
間の管理をしているが、申告された始業終業時刻に対するパソコンのログオン・ログオフ時間
(社外からのサーバアクセス時間を含む)の差異を定期的に確認している。
■情報通信環境の整備
【在宅勤務】
リモートアプリケーションや仮想デスクトップ(Virtual Desktop Initiative)を導入し、
利用しやすい環境を提供している。また、コミュニケーションツールとして Web 会議シス
テムや社外でもつながる内線を全社員に貸与するなどし、自宅においても会社と変わらない
環境を整備している。
【サテライトオフィス勤務】
八重洲にあるサテライトオフィスを社内と同様の情報通信環境に整えており、主に出張な
どで外出している社員が利用している。
サーバ側で動作させているアプリケーション画面をテレワークで使用しているパソコンな
どにリアルタイムで配信し、作業したデータがパソコン上に残らないシステムを運用してい
る。
これにより、いつでも・どこからでも・デバイスを選ばずに、より安全性を高めた形でテ
レワークを行うことができる。
ワーク・ライフ・バランスに関する事項
■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
在宅勤務時は、5:00 〜 22:00 の間で柔軟に働けるよう、コアタイムを設けないフレッ
クスの形を取っている。また、在宅勤務中の中抜けも認めている。
社員の健康面を考慮し、休日および深夜時間帯の利用は週 2 時間までとしている。制度導
入時は原則禁止としていたが、海外との打合せは自宅で深夜時間帯に行いたいとの声があり、
健康面を考慮したうえで週 2 時間まで可能としている。
その結果、時差のある海外との打合せのためだけに、会社に残る必要がなくなり、身体へ
の負担が軽減し、効率的に仕事を行えるようになっている。
【その他】
在宅勤務制度の導入と同時に、より柔軟に働けるよう時間単位休暇*を導入。時間に制約
のある社員が、これまでは育児や介護などを理由に休暇を取って対応していたことが、在宅
勤務を行うことで休暇を取らずに対応することができるようになった。時間制約があっても
働く時間を確保できるようになったという声は多く挙がっている。また、こうした働き方が
可能となることで、離職防止や人材の定着にも効果があると考えている。
*有給休暇を 1 時間単位で、年間で 40 時間(有給休暇 5 日分)まで取得できる制度。所定
就業時間の中であれば、どこでも利用ができるようになっている。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【高齢者・障がい者】
在宅勤務導入時は、一般社員のみを対象とし、シニアや契約社員については、対象者を限
定して制度利用を認めていたため利用者は 6 名であった。その後、シニア社員からテレワー
クを利用したいとの声が多く、制度導入後の運用面での問題がないことが確認できたことか
ら、2017 年 9 月よりシニア社員と契約社員まで制度の対象者を拡大した。今後は、テレワー
クの利用者は増える見込みである。
障がい者については、制度導入時から積極的に利用を勧めており、身体に障害をもつ社員
6 名が利用している。
【育児・介護の要のある者】
育児や介護で在宅勤務を利用している社員の働き方や声を社内報やイントラ内に掲載し、
積極的に利用できるようにしている。
また、子供が小学校入学直後の 4 月 30 日まで、1 日 2 時間を限度に、1 回 30 分単位で午
前と午後に各 1 回もしくは 1 日 1 回取得ができる育児時間制度を設けている。この育児時間
を取得している社員の約 60% が在宅勤務と組み合わせて利用しており、柔軟な働き方の実現
により仕事との両立を図っている。2016 年度の実績で 45 名が育児時間制度を利用している。
【その他】
在宅勤務制度の定着を目的に、2016 年 12 月に以下のとおり、在宅勤務推奨月間キャンペー
ンを実施しており、推奨月間におけるテレワークの利用者数は、前月までの利用者数の 10
倍となっている。(2016 年 11 月:36 名、2016 年 12 月:374 名)
〈目的〉
○在宅勤務の浸透
○生産性向上やワーク・ライフ・バランスの実現における在宅勤務の有効性の確認
○働き方改革や在宅勤務を促進していくうえでの改善点の発掘
〈対象者〉
役員、管理職、一般社員
〈実施条件〉
○コーポレート系の職場で勤務している社員は、期間内に必ず 1 回以上利用すること。
○コーポレート系の職場以外で勤務している社員は、部単位で必ず 1 人以上利用すること。
2017 度も実施予定であり、2 月の実施時にはトライアルとして場所の制限を解除し、自宅
や、現在利用可能なサテライトオフィス以外の場所でもテレワークを利用できるようにする
予定である。
■社員の満足度
2017 年 2 月に実施した在宅勤務に関するアンケートのなかで、在宅勤務利用経験者の約 9
割がテレワークは有効であると回答している。
■その他
2016 年 4 月に在宅勤務と同時に導入した時間単位休暇制度を導入したことで、ワーク・ラ
イフ・バランスの実現に向けて、働き方の多様化が進んできている。
テレワークを活用した社員の空いた時間は、運動を行ったり、英会話レッスンを受けるなど
の自己啓発、家事や家族と夕飯を一緒に食べる、というようなことに充てることができている。
他社の模範となる取組に関する事項
■労務管理上の工夫
在宅勤務を実施の際は、事前に上司へ在宅勤務時に行う業務内容を申請することを制度の中
に入れており、そのアウトプットを見て在宅勤務中の評価ができるようにしている。
テレワークを利用するにあたり、申請フォーマットや細かい運用ルールなどは特に決めてお
らず、職場ごとに業務にあった運用方法を取っている。
中抜け等に関しても事前に申告をさせるようにしている。
Web 会議システムにより、業務中なのか離席中なのかがパソコン上で確認できるようになっ
ており、チャット等でいつでもコミュニケーションが取れる環境を整えている。
■環境整備上の工夫
リモートアプリケーションおよび仮想デスクトップ(Virtual Desktop Initiative)を用いて、
オフィスと同等の勤務ができるようにしているほか、社外でもつながる内線電話やパソコンは
全社員に貸与している。在宅勤務時は、個人所有のパソコン利用も許可しているため、会社の
パソコンを持ち帰る必要がない。
働き方に関する制度や事例をまとめた情報サイトを作成し、社内イントラネット上に掲載し
ている。
在宅勤務だけに限らず、フレックスタイムや時間単位休暇等を利用して、柔軟な働き方を実
践している社員の声なども紹介し、社員全体の働き方改革を促している。
■生産性向上の工夫
テレワークの導入とあわせてペーパーレス化を実施しており、紙での申請を必要とするワー
クフローの見直しをおこなっている。
毎月、複合機の出力状況データを公開し、意識改革を促しているほか、2016 年 10 月には紙
廃棄キャンペーンを実施している。また、ペーパーレス視点での働き方改革セミナーも開催し
ている。
この結果、2016 年 6 月から 2017 年 5 月の 1 年間で、職場における保管文書の量が約 20%
削減した。
図表 4 のとおり、社員が国内外どこからでも、必要な情報にアクセスできる環境を目指し、
現在もペーパーレスの取り組みを継続している。
個人で行う業務でみると、在宅勤務でやると生産性が上がるという声が多く挙がっている。
また、企画などの考える仕事も在宅勤務時は一人で集中できるため、結果として生産性向上の
効果があると捉えている。
在宅勤務を導入してまだ期間が短いため、現状は社内に浸透させるための取り組みにフォー
カスし、生産性向上の施策を行っている。
■その他
2015 年度から他の導入企業の事例を参考に、制度設計を進めた。特に、制度利用対象の点
では、育児や介護だけに対象を絞ってしまうと逆に利用がしづらいという事例を踏まえ、導入
時は、シニア社員・契約社員を除く一般社員および障がい者を対象とした。
制度導入前に、利用希望者を社内全体から募集し、3 カ月間のトライアルを実施。トライア
ル後に利用者本人とその上司へのヒアリングを行い、メリットやデメリットを確認した上で制
度設計へ反映させている。
多くの人が柔軟に利用できるように時間単位でテレワークを利用できる制度としており、出
張前や出張後等でも利用でき、移動時間も有効に利用できるため、疲労軽減につながっている。
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