住友商事株式会社

テレワークをアウトプット志向の働き方を実現するための手段として、全社をあげて活用しており、生産性の向上とともにワーク・ライフ・バランスを実現できている。社内報や社内ネットワークを活用し、経営層のテレワーク体験記の発信を行うなど、テレワークの活用を周知しており、業務の棚卸しや見える化を実施することでパフォーマンスの最大化を意識した働き方の見直しを徹底して行っている。
■制度の整備状況
 「在宅勤務」、「サテライトオフィス勤務」、「モバイルワーク」の3形態を網羅したテレワーク
制度を整備している。運用ルールの詳細やFAQ等を含めたテレワークガイドラインを作成し、社内で公開している。

テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務
モバイル勤務 サテライトオフィス勤務
テレワークの利用者数(過去1年間) 約4,000人

在宅勤務の定義 従業員の自宅、または自宅に準ずる場所において勤務すること。
サテライトオフィス勤務の定義 会社所有の所属事業場以外の会社専用施設、または会社が契約(指定)してい
る他会社所有の共用施設において勤務すること。
モバイルワークの定義 在宅勤務及びサテライトオフィス勤務以外で、かつ、社外で勤務すること。
適用範囲 原則として、部以上の組織単位とする。必要に応じ、チーム等の小単位も可。
対象者
■勤務年数 1 年以上の者(但し、キャリア採用者は勤続 1 年未満でも可)
■テレワーク勤務が適当であると会社が認めた者
■自宅の環境が適正と認められる者(在宅勤務の場合)
実施上限 原則 1 週間に 14.5 時間(週 2 日相当時間)を上限とする。
主な運用ルール
■業務計画を事前に上司と擦り合せの上、テレワークの予定をスケジューラに登録し、社内関係者に事前共有する。加えて、非管理職は、テレワーク開始と終了時にメール / チャット / その他システム等で、上司及び関係者に当日の業務計画等を報告する。
■テレワーク実施中はコラボレーションツールにサインインし、常に在席状況が分かる状態にする。
■経営上の位置付け
 『中期経営計画2020』における人事戦略の基本コンセプト「Diversity&Inclusion」を実現するため、新たに定めた人事施策の方向性のうち、「多様な個々人が最大限力を発揮するための環境整備」に対する具体的施策として、2018年11月に、国内単体勤務者4,000人を対象にテレワーク制度及びコアタイムのないスーパーフレックス制度を導入した。従来の枠(働く時間・場所・スタイル)に捉われない自律的かつ柔軟に働く環境を整備し、成果を意識するアウトプット志向の働き方の促進を目的としている。
 テレワーク制度の導入にあたっては、2018年1月に前社長(現会長)が年頭挨拶で自律的かつ柔軟な働き方を実現する施策としてテレワークを導入すると発言して以降、経営層が社内外に対して導入促進を行ってきた。現社長も社内へのメッセージでテレワークを活用しアウトプット志向の新しい働き方の促進にたびたび言及し、経営層主導で取り組んでいる。
■周知・啓発方法
 テレワーク導入に向け、全社説明会を東京、大阪、名古屋、広島で実施(計35回、延べ2,894人が参加)している。また、欠席者向けには説明会を録画した動画で後日視聴を促し、全社への浸透を図った。説明会では、テレワークを効果的に活用していくために各組織でのコミュニケーションが必要不可欠であることや、働き方を自分で選択できるからこそ、アウトプットに対する責任を各人が持たなければならないことなどを伝えた。また、制度導入を働き方進化のスタートと位置づけ、制度の活用状況や課題に関する評価を定期的に実施し、現場の意見も取り込みながら、必要な対策をスピーディーに実行し、成果を意識するアウトプット志向の働き方の浸透・定着に取り組んだ。
 また、テレワーク活用にはITリテラシーの向上が不可欠なため、全社員を階層ごとに分け、受講対象者に合わせたIT講習会を実施(計89回、延べ1,115人が参加)した。また、社内イントラネットでは、「ITサバイバル通信」と名付けたIT関連豆知識の発信も行っている。
 更に、会長、社長を始めとする経営層にもテレワークを体験してもらい、その様子を「SCテレワーク通信(全9回)」と銘打って発信する等、トップ主導で理解浸透を図っている。「SCテレワークちゃんねる!(6回配信済)」と名付けた動画チャンネルにおいても、テレワークを利用する社員へのインタビュー、経営層のインタビュー等を継続的に発信している。

 この他の取組として、各部署にテレワークの推進担当者を配置し、事務局と連携しながら各現場での周知・啓発活動をしており、推進担当者の交流会では、テレワークデイズ期間の2019年7月〜9月に社内で実施したプロジェクト「Workstyle Transformation 2019」(ワクトラ2019)のアイデアを議論し、期間中の優れた取組を表彰する「アワード」等を実施してきた。
■人事・労務管理の整備
 テレワークを実施する際には、業務計画を事前に上司と擦り合せの上、予定を社内のスケジュールソフトに登録し、社内関係者と共有できるようにした。加えて、非管理職は、テレワーク開始と終了時にメール/チャット等で、上司及び関係者に当日の業務計画等を報告し、開始、終了の報告と実際の始業終業に乖離がないか、上司と部下で確認を行っている。また、勤務開始・終了時刻とパソコンの使用時間に乖離がないか確認できるよう、パソコンのログオン/オフ時刻と勤務時間票システムを連動させている。
 テレワーク実施中は常にコラボレーションツールにサインインすることを義務付け、在席状況が分かる状態にしており、15分以上離席する場合は申告することになっている。
【人事評価面での取組】
 人事評価は従来から成果によるものとしており、テレワーク制度の各種説明会でもその旨を改めて説明すると共に、テレワーク制度の目的は、従来の枠(働く時間・場所・スタイル)に捉われない自律的かつ柔軟に働く環境を整備し、アウトプット志向の働き方の促進することであり、「働き方を自分で選択できるからこそ、アウトプットに対する責任を各人が持たなければならない厳しい制度である」というメッセージを発信している。
 実際にテレワークを通じて業務の棚卸しや見える化を、従来以上に徹底して行うことで、より時間当たりの成果を意識するようになったとの部下側の声や、部下の仕事のマネジメント上非常に効果的との上司側の声が上がっている。

■情報通信環境の整備
【在宅勤務】
 会社貸与のノートパソコン、スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、データ通信カー
ド、ヘッドセット及び個人所有パソコンを用いた在宅勤務を可能としている。社内システムは基幹系システムを含めて、リモートアクセスに対応しており、在宅勤務時も社内とほぼ同様の業務遂行が可能である。
 加えて、2020年5月にクラウド型の経費精算システムとチャットやWeb会議などの機能をもつコラボレーションインフラを導入した。今後もワークフローシステム(文書の電子回付システム等)の導入等、ペーパーレス・電子化等の取組を更に推進していく予定である。
【サテライトオフィス勤務】
 サテライトオフィスは2社と契約し、首都圏を中心に200拠点が利用可能である。更に東京都中央区に所在する自社の研修所もサテライトオフィスとして開放している。在宅勤務と同様、会社貸与のツールを用いたサテライトオフィス勤務が可能で、サテライトオフィス勤務時も社内とほぼ同様の業務遂行ができるようになっている。
【モバイル勤務】
 会社貸与のツールを用いたモバイル勤務を可能としている。モバイル勤務時も社内とほぼ同様の業務遂行が可能である。
ワーク・ライフ・バランスに関する事項
■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
 テレワークを利用する社員が始業時間や終業時間を柔軟に設定できるよう、テレワーク制度と同時にコアタイムなしのスーパーフレックス制度を導入した。これにより、テレワーク利用者(特に在宅勤務利用者)が、育児・通院等の事由で中抜けすることも可能となり、より柔軟な働き方を実現している。テレワークを利用する社員が長時間労働にならないよう、フレキシブルタイム外(22:00〜5:00)のテレワーク勤務は原則禁止にしている。
 テレワーク制度の目的は、働く時間・場所などといった従来の枠に捉われずに、自律的かつ柔軟に働ける環境を整え、社員のアウトプット志向の働き方を促進し、パフォーマンスの最大化に繋げることであるため、一律の労働時間削減等は実施せず、働き方そのものを見直すことを本丸として、様々な取組を行っている。2019年度の時間外労働は2018年度比21%減少した(9.9時間⇒7.8時間)。
■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
 国内単体勤務4,000人の全社員を対象に制度運用しており、高齢者や障害者の方も含め全社員がテレワークを利用できる環境となっている。
【育児・介護と仕事の両立】
 国内単体勤務4,000人の全社員を対象に制度運用しており、家庭において育児を行う必要のある者もテレワークを利用できる環境となっている。福利厚生ではなく、あくまで仕事のパフォーマンスを更に向上させる“ツール”として導入しているからこそ、社員からは、かえって負い目を感じることなくテレワークを利用できるとの声も上がっている。
【深夜業務への対応】
 深夜に海外の取引先との電話会議がある場合などは、これまではオフィスでの待ち時
間が発生していたが、テレワーク制度を活用することで、一旦帰宅の上、食事や家事を済
ませ、Webから会議へ参加することが可能となった。
■社員の満足度
 2019年2月、2019年9月、2020年に実施したアンケートで、「働きがい向上に対し、ポジティ
ブな効果があった」「働きやすさ向上に対し、ポジティブな効果があった」という回答をした社
員がそれぞれ9割となった。
■社員の健康への配慮
 怪我等で通勤が難しい場合には、個別に制度を弾力運用している。全社のガイドライン上は週2日(14.5時間)を上限と設定しているが、個別の申請があった場合には、これを撤廃し、週5日の在宅勤務を可能としており、治療と仕事の両立を実現している。
 2018年9月のオフィス移転を機に、テレワークやスーパーフレックスの導入を含む働き方改革として、「書類半減・書類のあり方見直し(4.6fm/人⇒2.1fm/人)」「ファイルサーバー上のデータ整理(コンサル支援の下、全部署で整理実施)」「会議のあり方見直し(ペーパーレス会議システム等による会議効率化実施等)」「ICTインフラ環境の抜本的な刷新」などを実施した。
 テレワークデイズ期間の2019年7月〜9月には「Workstyle Transformation 2019」と題した促進施策を実施し、全社員一律の定量目標(期間中3回以上実施)の達成を通じ、各組織における働き方について議論し、議論した結果を実践した。制度の長所や短所をしっかりと見極め、全社の総和としてプラスになるよう、アウトプット志向の働き方の浸透に取り組んでいる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です