味の素株式会社

テレワークの取組、ワーク・ライフ・バランスの実現ともに極めて優れている。特に、
生産オペレーターもトライアルを実施するなど、テレワークを活用した多様な働き方
でワーク・ライフ・バランスを実現している。

テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務 
モバイルワーク サテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去 1 年間) 2,922 人


■制度の整備状況
 「どこでもオフィス」という名称で、自宅やサテライトオフィスの他、セキュリティが確保
され、集中して勤務できる場所であればどこでも勤務できるテレワーク制度を導入している。
現在では生産オペレーターを含む全社員の 84%がテレワークを活用している。2014 年 10 月か
ら最大月 4 回を上限とした在宅勤務制度を導入していたが、2017 年 4 月に現行の制度に改めた。
〈テレワーク制度のポイント〉
○試用期間中や新卒採用者で勤続 1 年未満の社員などを除く全社員が対象。
○最大週4日まで、終日のみならず 30 分単位で活用できる。
○コアタイムなしのフレックスタイム制や時間単位年休との併用が可能。
■経営上の位置付け
 テレワークの実施は、多様な人財の活躍を実現する上で不可欠な働き方であるという観点か
ら、テレワークを含めた働き方改革推進の取組を中期経営計画に入れるとともに、経営会議を
サテライトオフィスで実施するなど、経営トップが率先して推進している。
 また、「どこでもオフィス」の導入にあたり、経営企画、情報、人事、総務部門からなる経
営直轄の会社横断の働き方改革事務局を設置した。現在ではさらに、事業や営業を統括する組
織、調達や財務部門も加えた働き方改革拡大事務局を設け、全社横断的に取り組んでいる。
■周知・啓発方法
 テレワークを含めた働き方改革に関する社内情報サイト「るるく」を作成し、月 2 回以上、
各部署のテレワークの好事例等を共有している。
 さらに、社長自ら、社内報にてテレワークの意義やメリットについて情報を発信している。
■人事・労務管理の整備
 労務管理は勤怠管理システムを活用している。テレワーク等、社外からのネットワーク接続
時刻(仮想私設通信網(VPN)の接続履歴)を勤怠管理システムに客観時刻として表示させ
ている。テレワーク利用者は、その時刻をもとに勤怠管理システムへの入力を自身で行ってい
る。自身の入力時刻と客観時刻に 30 分以上の差異がある場合は、テレワーク利用者本人がそ
の差異理由を申請し、上司はその内容を確認するというステップを必ず踏むようにしている。
~「どこでもオフィス」の導入~
顔を合わせないと仕事ができないという既成概念を打破する
ルール策定(緩和)
・週1の出社以外は利用制限なし
・申請は前日まで、終了報告不要
・業務内容・場所は問わない
・育児・介護との併用可
風土醸成
・管理職は週1回(ルール)
「どこでもオフィス」
・テレワークデー本社実施
・サテライトオフィス利用料は
全社負担(部門負担なし)
基盤整備
・軽量PCの全社導入
・社宅サテライトオフィス化
・社外サテライトオフィス契約
・モバイル勤務履歴(VPN)の開示


■情報通信環境の整備
【在宅勤務、モバイル勤務】
 全社員にカメラ付き軽量パソコンとスマートフォンを貸与し、スマートフォンのテザリン
グ機能を用いてテレワークができる環境を整備することで、自宅に LAN 環境がなくともテ
レワーク出来る仕組みを構築している。
【サテライトオフィス勤務、モバイル勤務】
サテライトオフィス会社と契約し、全国約 140 拠点のオフィスを利用可能としている。ま
た、自社の事業所内にサテライトオフィススペース(全国 11 拠点)、社宅にサテライトオフィ
ス(東京・大阪の 2 拠点)をそれぞれ設置し、サテライト環境を確保している。


■健康で豊かな生活のための時間の確保
【労働時間の工夫】
 テレワークの拡大に合わせ、2017 年 4 月より所定労働時間を 20 分短縮(年間 80 時間相当)
したほか、生産オペレーターを除く全社員にコアタイムなしのフレックスタイム制度を適用
している。
 この取組の結果、テレワーク利用者を含む全社員の総実労働時間が対 2016 年度比で 75 時
間減少して 1,842 時間になったほか、短時間勤務者が 14%減少して、よりフルタイムで働く
ことができる環境整備ができた。
 テレワーク等、社外からのネットワーク接続時刻(仮想私設通信網(VPN)の接続履歴)
を勤怠管理システムに表示して労働時間を見える化することにより過重労働を防止してい
る。
 さらに、本社閉館時刻の前倒し(水曜 17 時、水曜以外 19 時)を実施し、所定労働時間内
での業務終了を奨励している。本社が早く業務を終了することにより、テレワーク中でも
19 時以降の指示依頼等が少なくなった。その結果、2016 年度比で平均終業時刻が 18 時前の
社員がテレワーク利用者を含めて、25%増加し、75%となった。
 また、毎週金曜日の午後をノー会議とし、半休取得、テレワークの活用を推奨している。
これらの結果、対 2016 年度比でテレワーク実施者が 37%(約 800 名)、総実施回数が約
37,000 回増加した。


■就労による経済的自立、多様な働き方・生き方の選択
【多様な人材の活躍】
 定年退職後のシニア社員や障がいを持つ社員もテレワークの対象として利用を推奨してい
る。この結果、2016 年度比で定年退職後のシニア社員利用者は 2.4 倍(20 人から 48 人)となり、
総実施回数は 1.2 倍となった。また、障がいを持つ社員の利用者は 1.7 倍(24 人から 41 人)
となり、総実施回数は 2.4 倍となった。
【育児・介護と仕事の両立】
 テレワークの申請は原則前日まで、上司了解の場合は当日申請も可能としているため、育
児や介護を担う社員にとって、利用しやすい柔軟な制度となっている。制度概要や情報管理・
セキュリティ対策等を規定した「「どこでもオフィス」運用ガイドライン」において「テレワー
ク中の育児・介護と勤務の併用を可能」と明記することで、テレワークの前後、または合間
に、育児・介護に従事しながら勤務することを推奨している。
 2016 年度比で 16 歳未満の子どもを持つ社員の総実施回数は 1.4 倍となった。

【その他】
 通常はテレワークが難しい生産オペレーターも、テレワークが実施できるように積極的に
トライアルを行っている。トライアルの結果、川崎事業所では生産オペレーターのテレワー
クの実施に成功した。
 川崎事業所の例(図表 2、3 を参照)では、工場に勤務する日勤の班長と日勤社員の A さ
んが在宅勤務で棚卸データの入力や生産計画の資料作成などの事務作業を行った。この結果、
事務作業を効率的にできたことで空き時間が生まれ、その時間を活用して生産オペレーター
の仕事を日勤班長と日勤社員の B さんが担当した。これによって、生産オペレーターの交
替勤務者も一部の事務作業を在宅勤務で実施することができた。
 工場の平均年齢は 40 歳代前半であり、今後、介護等の必要が生じた場合でも柔軟な勤務
ができる体制があることが強い組織につながると考え、成功事例を工場の報告会でも共有し、
好事例の横展開(水平展開)を推進している。

■社員の満足度
 「どこでもオフィス」やコアタイムなしのフレックスタイム制の導入などをはじめとする柔
軟な働き方の導入や、成果にコミットした自律的な働き方を促す意識改革などの取組の結果、
2017 年度に組織での働きがいや仕事への熱意に関する意識調査「エンゲージメントサーベイ」
を実施したところ、79%の社員が「働きがいを実感している」と回答した。
他社の模範となる取組に関する事項


■労務管理上の工夫
 「「どこでもオフィス」運用ガイドライン」に、「どこでもオフィスの活用自体による人事評
価ヘの影響はない」ことを明記し、テレワーク実施者についても公正に評価している。また、
人事評価の要素の1つに 2017 年度から「生産性向上」を入れている。
 所定外労働時間と休日労働時間の合計が 60 時間を超える場合は保健師からアンケートを送
付し、80 時間を超える場合は産業医または保健師による面談を行っている。


■環境整備上の工夫
 全社員にスケジューラーの入力を徹底することで、モバイル環境下でも会議調整できるよう
にしている。
 テレビ会議を効率的に実施するための大画面ディスプレイを全社で 80 台、役員室・会議室
に導入しているほか、スピーカーとマイクを配置し、いつでも簡単にテレワーク利用者と会議
ができる環境を整備している。

■生産性向上の工夫
 テレビ会議を奨励するほか、全社でペーパーレス化を推進しており、ペーパーレス会議の推
奨、領収書の電子申請、パソコンからの FAX 受発信等を実施している。
 この結果、テレビ会議の実施回数は 2016 年度比で約 2 倍となるとともに、ペーパーレス化
については、経営会議・取締役会で約 13 万枚、本社コピー枚数は約 100 万枚削減(20%削減)
を実現した。
 さらに、本社では 2019 年 4 月に向けて順次フリーアドレスを実施しており、1 フロアでフリー
アドレスを実施した結果、9 割の書類キャビネットを削減できた。


■その他
 テレワーク・働き方改革の取組を日本全体に広げるべく積極的に講演・取材へ協力している。
2017 年度以降の講演数は 45 件、取材数は(他社、マスコミ、政府機関等)60 件となった。
 また、テレワーク・デイズにも積極的に参加しており、2018 年度は味の素国内グループ会社(4
社)を含む、東京及び近郊地区勤務者の計3,000 名を対象に7月23日〜27日の複数日でテレワー
クを実施した。この結果、通常の 1.3 倍となる 1 日平均 1,089 名がテレワークを実施した。

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