ネスレ日本株式会社

「フレキシブルワーキング制度」を設け、社員全員が利用の制限なく、テレワークを利用している。
経営トップが率先垂範し全社員を対象としてフレキシブルな働き方を推奨。
テレワークの導入形態
終日在宅勤務 部分在宅勤務 
モバイルワーク サテライトオフィス
テレワークの利用者数(過去 1 年間)
■制度の整備状況
①「フレキシブルワーキング制度」
【社内制度・規定】
 全社員対象で、利用事由を問わず、テレワークの利用回数の制限なく自宅等社外での勤務を可能
とする「フレキシブルワーキング制度」を平成 28 年 1 月から導入している。
【制度を実施しやすくするための工夫】
 テレワーク導入前に管理職対象の説明会で「フレキシブルワーキング制度」の理解促進を図ると
ともに、イントラネットでの案内や詳細な FAQ 等の情報提供によって社内全体での周知・理解促進
を図っている。
 テレワーク導入後、制度利用者に対してアンケートを実施して「通常勤務時と比較した生産性・
業務効率」「良かった点」「悪かった点・改善すべき点」を把握し、ネットワーク速度等の IT 環境に
対する意見・要望をシステム担当部門にフィードバックして、継続的な改善につなげている。
 フレキシブルワーキング制度の下では管理職のマネジメントスキルがより重要になるため、管理
職に対する研修を強化している。
【対象者の範囲】
 全社員対象※であり、利用事由を問わず、利用回数の制限はない。
※業務効率・生産性が高い状態で勤務できることが前提であるため、出勤することなく業務を遂行
することができない職種・業務内容の一部社員を除いている
②「モバイルセールス」
 平成 26 年までに営業部員のモバイルセールス体制(直行直帰・社外で業務可能)が整い、毎日出
社することなく営業活動を可能にすることで業務効率化とともにワーク・ライフ・バランスを実現
している。
 営業部員専用のモバイル端末(スマートフォン)を会社から貸与し、テザリング機能による社外(自
宅・外出先)からのネットワーク接続や営業計画 / 実績 / 販促金管理システムへの入力等により社
外でのスムーズな業務遂行を可能としている。
③「在宅勤務の障害者雇用」
 身体障害者の方を在宅勤務社員として雇用している。(平成 26 年 11 月〜)
■経営上の位置付け
○「フレキシブルワーキング制度」の導入に際して経営トップ(CEO)からメールマガジンや労働組
合の行事等で生産性向上のためにフレキシブルな勤務体系・職場環境を推進するコミットメント
を発信した。
○「Nestlé in society 共通価値の創造と 2015 年私たちのコミットメント」というステークホルダー
に向けた報告書でも、ダイバーシティ推進の取組みの一つとして「フレキシブルワーキング制度」
の導入を紹介している。
○「ネスレにおけるフレキシブルな勤務環境(Flexible Work Environment in Nestlé)」というグロー
バルポリシーを平成 22 年に発行しており、時間・場所・キャリア等の点でフレキシブルな働き方
を全世界で進めている。
■周知・啓発方法
○「フレキシブルワーキング制度」の導入前に管理職対象の説明会で制度の理解促進を図り、イント
ラネットでの案内や詳細な FAQ 等の情報提供によって社内全体での周知・理解促進を図った。
○社内の人事制度や福利厚生を紹介する研修資料や「出産・育児サポート制度」の紹介資料でも「フ
レキシブルワーキング制度」について触れ、制度の周知・利用促進を図っている。
○台風・大雪等により交通機関の乱れが予想される際には無理に出社することなくフレキシブルワー
キング制度の活用を検討するようにイントラネットで案内している。
■人事・労務管理の整備
【始業・終業ルール】
 「フレキシブルワーキング制度」とフレックスタイム制・半日年次有給休暇の併用を可能とし、勤務
可能な時間帯を午前 5 時から午後 10 時の間でフレキシブルに選択できるようにすることで、育児・介
護等社員個人のニーズと仕事の両立を可能としている。
【成果の把握・人事評価】
○「パフォーマンスカルチャーの推進」を全社で推進しており、年初の面談では、可能な限り目標を
数値化して設定し、客観的な基準の下で評価を行っている。
○利用事由や利用回数が無制限のテレワークを実施する上で、管理職の評価・育成能力がより重要
になることから、管理職研修の強化にも取り組んでいる。
■情報通信環境の整備
【利用環境】
○クラウドサービスと WEB 会議システムを組み合わせて、どこにいても会話しながらの作業が
できる環境を提供し、それを紹介するイベントを本社で実施。各種機能の使用方法の説明や
FAQ が参照できるイントラネットページも作成し、使用時のトラブルや疑問にも対応できる環
境を整備。
○デバイス(全社員対象) … 原則として希望者全員に Web カメラ内蔵のノート PC 貸与(複数貸与
は不可)、希望者全員にヘッドセット貸与。
 デバイス(営業部員対象) … 「モバイルセールス」用にスマートフォンやタブレットを貸与し、タ
イムリーに情報を共有、テザリング利用により場所を選ばずに PC をネットワークに接続可能とし、
行動管理・営業計画/実績/販促金管理システムやイントラネット等の社内ツールの使用を可能
としている。
【セキュリティ対策】
○独自のネットワークで、各マーケットとシステムを結んでいる。また、付与している PC 自体
にも内部の情報を暗号化する仕組みが導入されており、外部からの攻撃にも備えている。
○全社員に対して入社時に「ネスレのエンドユーザーセキュリティポリシー」を配布する等情報
セキュリティに関する教育・情報提供を図り、「フレキシブルワーキング制度」を利用して社外
での勤務を開始する前に E ラーニングの受講を求めている。
■業務プロセス、組織風土の改善
【テレワーク実施時の工夫】
 「フレキシブルワーキング制度」の目的は社員が働く場所にとらわれず、考える仕事や付加価値を生
む仕事に集中し、最大限の成果を出すことを通じて労働生産性を向上させることなので、自宅等社外
で業務を行うことで生産性を高められるように各自で考え、管理職はそれをサポートすることを推奨
している。(例 : 終日自宅で集中的に企画・分析・資料作成の個人ワークを行う)
 全社共通の取り組みとしてチームの目標と個人の業務の整合性を取り、定期的に状況確認・問題の
解決を図る仕組みがあるので、テレワーク実施者も含めて各人の業務の進捗を把握し、業務上の問題
の有無を明確にしている。
【テレワーク実施者と同僚間のコミュニケーション】
 WEB 会議システムを利用することで、音声と映像をつないだテレビ会議も実施可能としている。
■アピールしたい点
【フレキシブルワーキング制度】
 全社員対象、利用事由を問わず、利用回数の制限なく自宅等社外での業務を可能とすることで、働
く場所にとらわれずに業務効率・生産性の高い働き方を社員各自が考えるようになっている。
 制度導入後の制度利用者へのアンケートでは、通常勤務時と比べて生産性(自己評価)が平均 7% 上
がった。
〈アンケートでのフィードバック(良かった点)〉
○電話/騒音/不要な会議・会話に妨げられることなく、自らの業務に集中できる。
○通勤の負担が減る、育児・介護その他個人的ニーズに対応可能により、ワーク・ライフ・バラン
スが改善。
○台風・大雪等による交通障害時など、無理をして出社することなく自宅で業務可能。
【モバイルセールス】
 平成 26 年までに営業部員のモバイルセールス体制(直行直帰・社外で業務可能)が整い、毎日出社
することなく営業活動を可能にすることで業務効率化とともに、ワーク・ライフ・バランスを実現し
ている。
【在宅勤務の障害者雇用】
 障害のために通勤することが支障となって、働くことが難しい障害者の方に、テレワークによって
雇用の機会を与えることができ、かつ、企業として優れた能力と勤労意欲をお持ちの方を活用するこ
とができている。
テレワークによって実現したワーク・ライフ・バランス
■労働時間の柔軟性
【フレキシブルワーキング制度の利用例】
○フレックスタイムを利用して病院に通院する時間以外の時間帯で在宅勤務。
○インフルエンザのため子供の学校が学級閉鎖になったため、在宅勤務。
○毎朝 60 分自宅でメール処理・資料作成を自宅で行った後に通勤ラッシュを避けて出社。
○子供の学校行事(PTA・授業参観等)への参加のために休憩時間を長くとり、朝と夜に 1 時間ず
つずらして勤務。
○出張に出発するまでの時間を有効活用して午前中のみ在宅勤務。午後は出張のための移動。
■休暇の柔軟性
【育児休業】
 子供が 1 歳に達した後の 4 月末までの間(ただし子が 3 月又は 4 月生まれの場合、満 1 歳 2 ヶ月に
達した後の月末まで)、育児休業の取得を可能としている。また、 法に定める特別な事情に該当する場
合は、1 歳 6 ヶ月に達するまで休業を可能としている。
【積立年次有給休暇】
 付与から 2 年が経過し、失効する年次有給休暇を最大 50 日まで積立可能としている。
 本人の傷病による休業の際だけでなく、家族の傷病看病(他に看病する者がいない場合のみ)と家
族の介護のための休業の際も利用可能としている。
【利用実績】
 育児休業を最大 10 日間有給とすることで、特に男性社員の育児休業取得を促進している。
(平成 27 年実績 : 子が生まれた男性社員の育児休業取得率 26.9%)
 平成 28 年には男性社員で 1 ヵ月半の育児休業を取得する事例もある。
■ライフイベントに合わせた働き方
【フレキシブルワーキング制度の利用例】
○子供の学校行事への参加と仕事との両立、子供の病気・通院等のために在宅勤務等、育児中の社
員が有効活用するケースが多い。
○育児の他にも介護のために在宅勤務、社員本人が通勤に支障のあるケガをしたために在宅勤務を
行うケースもある。
【社内保育所】
 育児がキャリアや職場環境における障壁とならないようにするため、神戸本社内「ネスレキッ
ズルーム」、霞ヶ浦工場内「ねすれっこはうす」という 2 つの事業所で社内保育所を設置し、50
人を超える女性社員が在籍する事業所に授乳室を設置している。
■女性の活用
○グローバルのイニシアチブにより経営戦略の一つとして、ダイバーシティ推進に全世界で取り組んでおり、特にジェンダーバランスの改善を最優先事項としている。
○施策の一つとして女性社員限定の社内 SNS を設置し、勤務地に関係なく女性社員同士のネットワー
クの構築や情報交換を促進している。海外赴任中の社員や育児休業中の社員からも利用されており、ネットワークの拡大や社内の情報共有に活用されている。
■やりがい、労働生産性の向上
【テレワーク実施時の労働生産性】
 全社員対象、利用事由を問わず、利用回数の制限なく自宅等社外での業務を可能とすることで、働
く場所にとらわれずに、業務効率・生産性の高い働き方を社員各自が考えるようになった。
 社員 1 人当たりの売上高は、平成 25 年 12 月を 100 とすると平成 28 年 3 月は 113.1 にまで上昇した。
■生活面の向上
 年間の一人当たりの時間外労働が約 50 時間と同業他社の水準と比べて非常に少ないため、仕事以外
の時間は比較的確保できている。
 仕事以外の時間を有効に活用してもらうため、語学・ビジネススキル等についての通信教育・オン
ライントレーニング・法人契約・資格受験料補助等、様々な自己啓発の機会を設けている。
 スポーツ・旅行・親睦会などのために利用可能な「レクリエーション補助金」の制度があり、毎年
ほぼ全社員が利用している。協賛しているイベントでのボランティア参加や各地域での地域清掃活動
など、会社としてボランティア活動への参加を積極的に行っている。

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