企業がテレワークを導入するメリット

テレワークがこれほど注目されるようになった社会的な理由としては、主に以下4つのメリットが挙げられます。

1. 生産性の向上

テレワークの最も大きなメリットは、「時間と場所を選ばない働き方」という点にあります。そのため、テレワークで働く社員(テレワーカー)が自分らしく働けることにより、仕事へのモチベーションも上がり、結果的に労働の生産性が向上できるでしょう。

2. 通勤の負担の減少

テレワークの大きな特徴の一つは、通勤を伴わないことです。特に通勤時の混雑が激しい首都圏では、出社日を減らす・なくすことで、従業員の体力的・精神的な負担を軽減し、仕事に取り組みやすい環境をつくることができます。テレワークの仕組みが整っていれば、毎日の通勤ラッシュ対策だけでなく、台風や大雨・大雪といった災害時にも従業員の安全性を確保できるでしょう。

また、総務省の「平成28年 社会生活基本調査」によると、2015年の日本国民の平均通勤時間は1日換算で34分(男性43分、女性25分)でした。この通勤時間が年間に渡ってカットできることを考えれば、各々が有効的に時間を活用できるようになります。

3. 従業員の定着

自社でテレワークが認められていれば、家事・子育て・介護を行わなければならない従業員でも、働く場所を自由に選択できます

例えば、発熱した子どもをとなりで寝かせて仕事をしたり、親がデイケアに行った合間で仕事をしたりすることなども可能です。「親の体調が急変し、病院に付き添わなければならない」といった事態が続き、同僚に迷惑をかけないようにと、やむなく退職を選ぶ必要がなくなります。

その結果、優秀な人材の定着に繋がるといえます。

4. 慢性的な人材不足の解消

エン・ジャパン株式会社が2019年1月に公表した「企業の人材不足」実態調査によると、アンケートに回答した762社のうち89%の企業が「人材が不足している」と回答しており、人材確保が多くの企業にとって緊急の課題であることは間違いないようです。

テレワークでは、地方在住者や海外在住者、車椅子使用者なども採用枠に入れることができるため、今までアプローチできなかった優秀な人材にも手を伸ばすことが可能です。都市部の企業が地方にサテライトオフィスを作ることによって地方人材を獲得する「まちごとテレワーク」も総務省によって行われており、新たなビジネスの獲得にもなり得ます。

また、働き方改革が推進される現在、「テレワークを導入している」のは企業の良いブランディングにも繋がるため、結果的に現在よりも自社への採用希望者が多くなることが予想できるでしょう。

5.コスト削減

自社のテレワーカーが増加すれば、オフィスに出勤する人員が必然的に減少するため、今まで支給していた交通費やオフィスコストの削減が見込めます

たとえば、月2回の東京本社での打ち合わせに、名古屋・大阪・仙台からは新幹線で、福岡からは飛行機を利用して移動し、さらに各メンバーが1泊ずつ宿泊すると、 半年で約198万円のコストがかかります。

そこにWeb会議を導入することで、大幅なコスト削減となります。

場合によっては現在よりも小規模なオフィスに移転することで、安い賃料で経営を行うことも充分に可能かもしれません。

また、移動費だけでなく紙の資料を全てPDFにするなど資料の電子化も行うことによって、印刷代も削減できます。

6.事業継続性の向上(BCP対策)

テレワークを導入することで、地震や感染症の蔓延といった予測不能の災害時でも、ITツールを使って業務のやり取りが今まで通りに行えるため、事業中断のリスクを最小限に押さえることができます

東日本大震災をはじめ、2020年のコロナ禍においても事業継続性の困難さを痛感した企業は多いのではないでしょうか。しかし日頃からITツールを使っての遠隔コミュニケーションに慣れておけば、いざという時の従業員の安否確認にも繋がります。

企業がテレワークを導入すべきか?

少子高齢化による労働人口の不足や国際競争力の低下といった問題を抱える日本において、自社が優秀な人材を確保し続け生き残っていくためにも、テレワークの導入は早急に検討すべき施策といえます。

初期の人的・金銭的な導入コストはかかりますが、中長期的に見れば、コストの削減や生産性の向上につながります。大手企業はもちろんですが、テレワークをこれから検討しようと考えている中小企業においても、さまざまな恩恵をもたらしてくれることでしょう。

またテレワークは、地域の活性化やワークライフバランスの実現による子育てしやすい環境作りなど、企業だけでなく社会貢献にもつながります。

テレワークの導入に失敗しないためにも、メリットやデメリット、導入ステップを今一度確認した上で、進めていきましょう。